新築の一軒家を購入する際、選択肢は2つあります。
すでに完成した住宅と土地をセットで購入する建売住宅と、ゼロからカスタマイズしてつくっていく注文住宅です。
建売は安いかわりに自由度がなく、注文住宅は高価なかわりに選択肢が広いというイメージがありますが、具体的にはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
建売住宅と注文住宅を比較しながら、どんな場合にどちらが向いているかを考えていきましょう。
4つのポイントで比較
建売住宅と注文住宅には大きな違いから細かな違いまで様々な点で相違がありますが、今回はわかりやすいように次の4つの視点から両者を比較します。
- 土地
- 価格
- 品質
- 間取り
◯土地
建売住宅
立地など条件の良い土地を見つけやすいのが建売住宅の魅力です。
良い土地を探すのは大変です。土地の良し悪しには駅やスーパーマーケット、学校からのアクセスや周囲の環境、日当たり、風通しなど様々な条件がありますが、全て完璧に条件を満たしている物件はまず見つかりません。価格と相談しながら妥協して決めることになります。
建売住宅の場合、注文住宅を建てるための土地を探すよりも良い条件の土地を探しやすいです。
建売住宅を販売する会社は、まず土地を購入し、その後家を建て、そこでようやく売りに出します。
商品になるまでのコストが高く時間もかかるため、完成後は早く売らなければ赤字になってしまいます。そこで、立地の良い売れやすい土地だけを建売住宅とし、売れ残りが出てしまわないように気をつけているのです。
建売住宅の購入者は注文住宅の購入者よりも立地を重視しているケースも多いため、建売住宅を扱う会社は立地を非常に重視しています。
また、一般の人が購入しにくい土地を購入できる資金力やネットワークを持っているのも強みです。立地が良くても広すぎる土地は個人での購入は困難です。
しかし、住宅会社であれば広い土地を買って分割し、そこに建売住宅を建てて販売することができます。
規模の大きな分譲地の場合、町並みの良さも建売住宅の魅力です。
似たような家が並ぶのを嫌う人もいますが、統一感のある町並みは落ち着いて見えます。
近隣住民も同時期に入居した人ばかりになるため、人間関係も構築しやすいです。
注文住宅
注文住宅の場合、土地を自力で探すか、不動産業者や住宅会社の力を借りて探さなければなりません。
良い土地を探すにはある程度不動産のことを勉強する必要があります。プロの力を借りる場合も、最低限の知識は必要です。
土地のことを学ぶにも土地を探すのにも時間と手間がかかります。
時間的余裕がある場合は良いのですが、転勤や進学に合わせたタイムリミットがある場合、じっくり土地を探していると間に合わなくなってしまう可能性もあります。
◯価格
建売住宅
価格は建売住宅の方が圧倒的に安いです。
複数の住宅をまとめて建てるケースがほとんどのため、仕入れ・設計・工事にかけるコストが大幅に削減できるためです。注文住宅と違い、工事途中で変更がある可能性もなく、工事期間も短いです。
更に、土地と住宅をセットで購入することになるため、全体でどのくらいお金がかかるのかがひと目でわかります。注文住宅のように、土地にお金をかけすぎて建物にかける予算が減ってしまったという失敗もおきません。
注文住宅
注文住宅の価格はピンきりで、建売住宅並の超ローコスト住宅から、高級住宅まで様々です。
ただ、建売住宅よりも安くするというのは非常に難しく、基本的には建売住宅よりも費用がかかります。
また、土地と建物にかける費用のバランスを自分で考えなければならないのもデメリットです。当初は予算内に収まる予定だったとしても、間取りや設備などあれこれ変更を加えていくうちに、どんどん価格が上がってしまったというのはよくある話です。
常に予算を意識して家づくりを進めていかなくてはなりません。
◯品質
建売住宅
基本的に価格相応のそれなりの品質です。
注文住宅とは違い、建売住宅は一件あたりの利益が少なく、数を建てなければ利益が出ません。同じような家を建てるため工事の難易度は高くありませんが、かえって技術のあまり高くない職人でも建築に携われるという欠点もあります。
短時間で工事を行うこともあり、工事自体の品質は正直言ってあまりよくありません。
ミスやトラブルを防ぐために現場監督によるチェックも行われていますが、それでも少ない人数で多くの物件のチェックを行うため、見逃しが起こりやすい環境であることには変わりありません。
特に壁の中や床下などは、完成後に見えなくなってしまいます。購入者が直接チェックできないところが多く、品質に不安が残りやすいです。
注文住宅
建売住宅よりも技術のある職人が関わっていることが多いです。
価格は高いですが、それだけ品質も期待できます。
施主が直接工事の現場を見に行けることもメリットです。基礎や構造部分など、後から隠れてしまうところがちゃんと工事されているかどうかの確認ができます。作業場にゴミが落ちていないか、散らかっていないかなどを見れば、職人の態度や姿勢も伺うことができます。
現場で作業をする大工や職人と、購入者が直接顔を合わせるチャンスがあるというのも、実は重要なポイントです。顔見知りの関係になってしまうと、なかなか手抜き工事はできません。
また、注文住宅の集客には口コミが非常に大きなウエイトを占めています。下手な工事をして購入者に不満が残ってしまうと、そこからどんどん客を失ってしまいます。次の仕事のためにも、高い品質の満足してもらえるような家を建てなくてはなりません。
ただし、注文住宅ならば必ず高い品質であるとは限りません。
注文住宅を扱って入るものの、普段は建売住宅が中心という会社もあります。工事をする職人が同じである以上、結局建売住宅と同じような質の住宅しか建ちません。
◯間取り
建売住宅
購入時にはすでに住宅がほとんど完成しているため、実際の建物を見ながら生活のイメージができます。建ててから想像と現実のギャップに悩まされる心配はありません。
建売住宅の間取りは良くも悪くもオーソドックスで、ごくごく普通の住宅です。誰でもそこそこ住みやすい家ではありますが、その家族の生活にぴったり合致した建売住宅というものはまず存在しないでしょう。
基本的には30代の子育て世帯に向けた物件が多く、それ以外の家族構成の場合、部屋を持て余してしまったり、個々の部屋が小さすぎて狭苦しく感じてしまったりしまいやすいです。
建てた家にどんな人が暮らすことになるかは建築段階ではわかりません。住みよい家をつくるというよりも、売れやすい家をつくるということばかりが重視されるため、見た目は良くても実際は使いにくい間取りの物件も多いです。
また、物件が売れたら終わりという意識の会社が多く、住んでいる人の感想や意見が次の住宅にフィードバックされることはほとんどありません。購入者の声をもとにした改善が行われず、住みやすさは二の次の物件ばかりになっているのはこのためです。
よくあるのがコンセントの少なさです。コンセントをたくさんつけるとそれだけコストがかかるため、最低限しか設置されていない建売住宅も多いです。実際に住んでみると、テレビ周りのコンセントが全く足りず、延長コードが必要になってしまったというのはよくある失敗談です。
購入前に間取りだけでなく、家電に必要になるコンセントの数や、掃除機や扇風機ののケーブルの長さなども考えておくと安心です。
注文住宅
家族の人数や生活スタイルにあわせて自由に間取りを決められます。
ハウスメーカーの場合、ある程度の規格が決まっていることもありますが、それでも部屋数や配置を自分で決められるのは大きなメリットです。
理想の間取りをつくるには時間がかかりますが、それも家づくりの醍醐味です。悩んだ分だけ自分の理想の住宅に近づけることができます。
ただ一つ注意しなければならないのは、自分の希望をきちんと言葉にして伝えなければ、結局規格通りの住宅にしかならないという点です。加えて、要望を汲み取ってそれを形にする担当者の能力も必要になります。
この二つがなければ、注文住宅だったとしても建売住宅のような無難な家にしかなりません。
また、注文住宅の自由度は基本的に値段に比例します。
ローコスト住宅の場合、間取りの自由度も設備や内装の選択肢もほとんどありません。中程度の価格帯の注文住宅でも、変わった間取りを実現しようとすると、急に価格が跳ね上がってしまいます。
注文住宅だからといって、どこの会社でも高い自由度があるとは限りません。自分の要望にあった住宅会社を選ぶようにしましょう。
◯建売住宅と注文住宅、どちらが良い?
ここまで土地、価格、品質、間取りの4つの観点から建売住宅と注文住宅を比較してきました。
どちらにもそれぞれ良い点・悪い点があり、一概にどちらが優れているとは言えません。建売住宅が向いているか、注文住宅が向いているかは何を条件によって違います。
建売住宅が向いている場合
・立地を重視している
・統一された町並みを希望している
・古い人間関係に煩わされたくない
・できるだけお得に家を建てたい
・予算であれこれ悩みたくない
・時間に余裕がない
・間取りはオーソドックスなもので良い
注文住宅が向いている場合
・土地よりも家にこだわりたい
・家づくりをじっくり楽しみたい
・品質を重視している
・工事現場を自分で確認したい
・自分好みの間取りにしたい
・個性的な家にしたい
住宅に何を求めているかによって、どちらを選ぶべきかが異なります。
品質や自由度を見れば注文住宅の方が圧倒的に「良い家」かもしれませんが、身の丈以上のお金を借りてしまうと、その後何十年も住宅ローンの返済に苦しめられることになってしまいます。家にお金をかけることだけが、良い人生と良い生活につながるとは限りません。
重要なのは、自分たちのこれからの生活を考え、それにあった住宅のカタチを探していくことです。