間取りを考えるなかで、意外と難しいのがトイレの場所をどうするかということです。
余ったスペースや家の端っこなどに設置されることの多いトイレですが、どこにあるのがいいのでしょうか?
◯トイレの配置が良いのは優秀な設計
トイレをどこに配置するかというのは、実はプロでも悩む問題です。
どこに置くかが難しく、トイレを上手に配置できる設計者こそ優秀であると言っても過言ではありません。
住宅にはトイレが絶対に一つは必要になります。
設置しないわけにはいきません。
しかし、同じように絶対に必要になるキッチンとは異なり、トイレは間取りを考える上での中心にはなりません。間取りの上で優先できないパーツでありながら、配置の難しい部屋なのです。
トイレは目立つ場所や他から見えやすい場所に設置する訳にはいきません。
しかし、使用頻度の非常に高い設備になるため、家の端や行きにくい部分などに配置するととても不便で使いにくいです。
狭い部屋だからと言って、適当にパズルを埋めるように、余ったところに適当に配置することはできません。
トイレは、目立たないけれど使い勝手のいい、絶妙なところに配置することが求められるのです。
また、動線や他の部屋との兼ね合いも考えなければなりません。
トイレは人の出入りが多く、扉の開け閉めも多くなります。出入りの際にドアがぶつかったり通行の妨げになったりしないよう気を配る必要があります。
このように、トイレの配置を考える際には注意しなければならないポイントがたくさんあります。
上手な位置にバランスよくトイレを配置できるのは、腕の良い設計者だけです。
◯やってはいけないトイレの配置
トイレの配置で一番困るパターンは、リビングやダイニングから出入りが見えるというものです。
リビングは滞在時間が長く、ダイニングでは食事が行われます。
人目につきやすいだけでなく、トイレの出入りを不快に感じやすい環境です。
また、出入りが目につくほど近い配置であれば、音が聞こえる可能性も高くなります。ひょっとすると、扉の開け閉めの際に匂いが気になることもあるかもしれません。
これでは、リビングにいる人も、トイレにいる人も落ち着きません。
どうしてもリビングダイニングとトイレが近くなってしまうという場合には、間に壁や目隠しを設置して、視線が通るのを防ぐなどの対策が必要になります。防音にも注意し、トイレの音がリビングに聞こえないようにする対策も必須です。
◯洗面所と隣接したトイレ
トイレの配置パターンの一つに、洗面所を通って利用するタイプのものがあります。
この場合の使い勝手や注意点はどうなのでしょうか。
洗面所を通るタイプのトイレのメリットは、トイレに専用の手洗い場を用意する必要がなくなることです。手洗いは洗面所を利用すれば良いため、トイレの面積を削ることができます。
面積に余裕のない狭小住宅でよく採用される間取りです。
洗面所で生活空間と区切ることができるため、目線や音が気になりにくく、寝室やリビングを接する心配もすくなくなります。
デメリットとしては、人数の多い家庭では、不便になりやすいという点が挙げられます。
洗面所にはバスルームもトイレ同様、隣接しています。お風呂にはいっている人がいるとトイレが使いにくく、反対に、トイレを利用している人がいると洗面所やお風呂が利用しにくいです。
狭い住宅では便利な間取りですが、家族が多い場合には不向きな配置です。
◯バス・洗面所・トイレが一体
今度は、ホテルなどによくある、バス・洗面・トイレの3点が一緒になったタイプの間取りの使い勝手を考えてみましょう。
3点ユニットのメリットは、部屋が広くなるため、明るい空間にしやすいということです。トイレや洗面所は日当たりの悪い配置になることが多いのですが、3つを一緒にすることで、光の入る心地よい空間にしやすくなります。
デザインの統一もしやすく、おしゃれなバス・トイレにしたいという人にも人気があります。
ただ、洗面所を通るトイレ以上に、トイレとお風呂を同時に使いにくいです。人数の多い家で3点ユニットを採用する場合は、トイレや洗面所を2箇所以上にしないと使い勝手が非常に悪くなります。
また、お風呂の湿気が洗面所やトイレにも伝わるため、湿気やカビの対策も必要になります。
◯玄関脇のトイレ
玄関脇にトイレを設置するのは、昔はあまり好まれない間取りでした。
これは、人の出入りのある玄関脇にトイレを配置するのは抵抗があると考えられていたためです
玄関で話し込んでいるとトイレに入りづらく、また、トイレにはいった前後に来客があるのも恥ずかしかったからです。
しかし、最近の間取りでは、玄関のそばにトイレを配置するのは珍しくありません。
なぜ昔は避けられていた玄関脇のトイレが増えているかというと、他に配置できる場所がないからです。
昔の家は今の家と比べて広いことも多く、廊下も長かったため、玄関とトイレを離す余裕がありました。しかし、現在の住宅に廊下はほとんど泣く、玄関とトイレを離すほどの余裕はありません。
また、玄関の近くで話し込むことが減り、玄関近くのトイレにデメリットを感じなくなったのも一因です。インターホンで応答ができるため、簡単な受け答えなら玄関を開ける必要すらありません。親しい人と長く話すのであれば、家に上げる方が一般的になるなど、習慣の変化も影響しています。
玄関そばのトイレは、スペース上の都合だけでなく、使い勝手で考えてもメリットがあります。玄関のそばならばリビングからすぐ見える心配もなく、目線の心配もありません。
出かける前にトイレに行く場合も、玄関に近いほうが便利です。
ただし、玄関周辺は人の通り道でもあります。
出入りの際にドアが人にぶつからないよう、ドアの方向や配置には気をつけましょう。
◯トイレの配置は生活への影響大
トイレの配置を考える際には注意しなければならない点が多々あります。
トイレは使用頻度も高く、配置を失敗した時の生活への影響は非常に大きいため、安易に場所を決めず、本当にそこで問題ないのかよく考える必要があります。
反対に考えれば、トイレの場所が良い間取りは優れた間取りであり、気配りのできる優秀な設計者が作ったものであるとも言えます。
間取りを見る時は、リビングやキッチンなどの目立つ部分だけでなく、トイレの場所にも気をつけて見るようにしましょう。