住宅は非常に高価な品物です。
しかし実際のところ、私たちがハウスメーカーや工務店に支払う金額のうち、家を建てるのにかかっている金額はどのぐらいなのでしょうか。高額な住宅をたくさん売っているハウスメーカーはやはりたくさんの利益を上げて儲けているのでしょうか。
今回は、注文住宅の原価率と、満足できる住宅を建てる方法について考えてみましょう。
◯新築一戸建ての原価
飲食で原価率の話をする場合、原価は食材の材料費や仕入れ費のみを指す場合が多いです。安定してお店を経営していくには原価率は3割程度が目安と言われています。
しかし、実際にお店を続けていくためには、材料費だけではなく、人件費やお店の家賃も考えなくてはなりません。販売価格から材料費、人件費、その他必要な経費を差し引いた残りの金額が利益となります。
住宅の場合も同じように、材料費や建材の仕入れ費だけを原価として考え、残りを利益のように捉えてしまってはいけません。住宅を1軒建てるだけでも、たくさんの職人さんの力が必要です。現場で働く人だけでなく、お客さんと要望を汲み取る営業担当の人や、設計を行う人、検査を行う人などにも人件費が必要になります。 住宅の原価は材料費だけでなく、人件費やその他住宅の建築に関わる諸々の費用を含めた金額で考えるべきです。
決算報告書からハウスメーカーの原価率を推測してみると、原価率はおよそ80%、経常利益は7%ほどです。思っていたよりも、利益は大きくないと感じた人もいるのではないでしょうか。
◯ハウスメーカーは工務店よりも原価率が低い?
ハウスメーカーと工務店の住宅価格を考える際、
「ハウスメーカーは広告にたくさんお金をかけているぶん住宅価格が高くなっている。広告宣伝費にお金を費やしていない工務店の方が得だ」
という意見を見かけることがあります。
確かに、チラシやCMには私たちが考えている以上に多額の費用がかかります。ハウスメーカーは知名度のためにたくさん広告を出したり、住宅展示場に出展したりしているため、その費用が住宅価格に上乗せされているのが気になるのは当然です。
ただ、大手ハウスメーカーと中小規模の工務店では手がけている棟数が違います。
例えば、ハウスメーカーが100万円の広告を、工務店が10万円の広告を出しているとしましょう。一見ハウスメーカーの住宅の方がたくさんの広告費を負担することになりそうです。しかし、ハウスメーカーが手がける住宅が100棟、工務店が10棟ならば、結局消費者が負担することになる広告費に違いはありません。
建てている住宅の規模が違う以上、単純に広告に費やしている金額だけで比べるのはあまり意味のあることではありません。
これは、広告宣伝費だけでなく研究開発費についても同じように言えることです。
◯原価率高い住宅は良い住宅?
注文住宅の原価率が気になってしまうのは、住宅価格の相場のわかりにくさにあります。
特に注文住宅の価格相場は複雑です。建築にかかる費用は土地の状況や立地にも影響されるため、妥当な価格を見極めるのは困難です。相場はあってないようなもので、誰もが無駄なお金を払わないように必死になっています。
妥当な価格を見極めるために複数見積もりを取ることもありますが、それでも確実にそれが正しい値段なのかはわかりません。
しかしここで気がついてほしいのが、住宅価格は安ければお得でそれで良いというものでも、原価に近ければ良いというものでもないということです。
同じトイレットペーパーを買いに行くなら、安売りのスーパーを利用した方がお得です。
けれども、注文住宅はオーダーメイドの品物です。安く購入できても、不満が残る結果となれば得をしたとは思えません。逆に、多少高くても快適で安心できる住宅なら、得をしたと感じることができます。
満足できる住宅を建てるために重要なのは、原価率を追求することではなく、予算内でどのように家を建てていくかということです。同じようにハウスメーカーで建てたら良い家になる、工務店で建てれば間違いないというものでもありません。
まずは、自分たちの生活にあった家はどんなものなのか考えてみることからはじめてみましょう。