住宅購入のための資金計画というと、どうしても家そのものの購入に必要にかかるコストや、ローンの返済についてばかり考えてしまいがちです。
しかし、住宅を所有するためには、それを維持するのに必要なコストも自分で支払う必要があります。
賃貸住宅であれば維持管理は大家が行い、マンションであれば管理組合が修繕を担います。しかし、持ち家の場合は修理の手配も支払いもすべて自分の責任で行うことになります。
一般的に、日本の住宅の寿命は30年ほどだと言われています。それ以降は定期的に修繕やリフォームを行わなければ快適に住むことができません。
また、住宅を所有していれば、メンテナンスのコストだけでなく税金の支払いも必要になります。固定資産税などの税金は家を持っている限り支払い続けなければならないため、それなりの金額を覚悟しなければなりません。
住宅を購入する際は、購入資金だけでなく、メンテナンス費用や税金など維持にかかるコストについても考えなくてはなりません。
◯家の修繕にかかるコスト
購入した直後は新築の綺麗な住宅でも、10年20年と住み続ければ当然劣化が進みます。建物の修繕や設備の交換や修理が必要になります。
●屋外のメンテナンス
屋根や壁など家の外側について、どのくらいの期間でメンテナンスが必要になるかは、修繕箇所や素材などによって異なります。
屋根は10年に一度がメンテナンスの目安とされています。屋根材を張替えるなどの修繕には100万円以上かかります。
屋根は紫外線や雨風にさらされるため、特に劣化しやすいです。万が一雨漏りがおこって家の内部が濡れてしまうと、建物は急激に劣化します。
住宅を長持ちさせるためには、屋根のメンテナンスは重要です。
外壁は10年から15年毎のメンテナンスが目安です。塗装をし直すことで家の見た目を良くしたり、耐水性を上げたりすることができます。
壁は面積が広いため、塗り直しには100万円以上かかることも珍しくありません。
●屋内のメンテナンス
住宅設備も経年劣化を起こします。
給湯器の寿命は10年から15年です。
ガスを使う以上、壊れる前に買い換えるのが安全です。また、給湯器の故障は冬季が多く、冬場にいきなりお湯が使えなくなる事態を避けるためにも、故障する前に取り替えるのが良いでしょう。
ユニットバス自体も2、30年を経つ頃には交換時期を迎えます。
エアコンも10年ほどが交換の目安です。機器自体の劣化だけでなく、10年経てばエアコンの性能は格段に向上します。消費電力を抑えるエアコンに交換した方が、古いエアコンを使い続けるよりもお得になる場合もあります。
畳の部屋があれば畳の張替えや交換が必要になります。襖や障子も張替えが必要です。
築30年を迎える頃には、他にもいろいろな不具合が生じます。家の設備や規模にもよりますが、住宅が築30年を迎える頃には500万円から700万円ほどのメンテナンスコストがかかるとされています。
●庭の管理コスト
庭を維持するのにもコストがかかります。
庭木の剪定を業者に依頼する場合、一本あたり6千円から2万円ほどかかります。剪定は年1回が基本ですから、毎年木の数だけ剪定費用がかかります。
手入れを自分で行う場合も、ある程度の費用はかかります。
植物の種や苗、肥料や農薬を購入したり、剪定ばさみや草刈り機を準備したりしなければなりません。
●シロアリ対策
木造住宅ならシロアリ対策は必須です。
シロアリが家に住み着くと、柱や土台がボロボロに食い尽くされてしまいます。
木造住宅を建てるときには、念入りにシロアリ対策を行います。しかし、当然時間が経てばその効果は薄れてしまいます。
10年も経てば薬剤を撒き直すなどの対策を再び行わなければなりません。
シロアリ対策にかかる費用は坪当たり6千円から1万円ほどです。
一階部分の広さに坪単価をかけた金額がシロアリ対策にかかるコストになります。
◯家にかかる保険と税金
●住宅にかける保険
火災保険や地震保険に加入するならば、保険料を毎年支払い続けなければなりません。
住宅ローンの条件に火災保険への加入が含まれていることも多く、家を建てるなら火災保険は必須です。
家に住み続けている限り保険料の支払いは続くため、ローンの返済にプラスして考えておくようにしましょう。
火災保険料は住宅の規模や構造によって異なります。一般的な住宅であれば年1万円から2万円程度になります。オプションを付けるならもう少し保険料は高くなります。
保険料は一括払いすることで割引してもらうことができます。以前は30年分を一括で支払うことができましたが、2015年以降は10年までと変更されています。
火災保険の補償対象となるのは、火災や落雷、台風や水害などで建物が被害を受けた場合です。家具や家電など家財に対して補償を受けるためには、オプションを付けるか家財保険に入る必要があります。
また、地震によって受けた被害についても火災保険の対象外です。地震に備えるには、地震保険に加入する必要があります。木造住宅や地震の多い地域に住んでいるなら地震保険にはできるだけ加入しておきましょう。
地震保険の保険料はどこの保険会社でも同じで、木造住宅の場合は1万円から3万円、それ以外の構造の住宅で5千円から1万7千円となります。
住宅や暮らしを守るための保険にはいろいろな種類がありますが、たくさんの保険に入ればそれだけ保険料の支払いも多くなります。家を買う前にどんな保険が必要かよく考えておくようにしましょう。
●住宅にかかる税金
一軒家を所有する上で生じる税金は固定資産税と都市計画税の2つです。
・固定資産税
土地や建物の所有者が支払う税金です。
税額は、以下のように算出されます。
固定資産評価額(標準化税額)×1.4%(標準税率)
固定資産評価額については、市町村など自治体に問い合わせれば知ることができます。また、標準税率は自治体によって異なるため、住む地域のものを確認するようにしてください
例えば固定資産評価額が1000万円なら固定資産税は14万円になります。
土地と建物それぞれに税金がかかるため、想像以上に大きな金額を払うことになります。
固定資産税を支払うのはその年の1月1日時点で所有していた人です。年の途中で土地などを売り買いした場合は、購入者が売却者に対して日割りで固定資産税分を支払うことになります。
建物の固定資産税については、住宅に対する特例措置が設けられています。
新築の一軒家の場合、普通の住宅で3年、長期優良住宅で5年、税額が半分になります。
マンションなどの3階建て以上の耐火・準耐火建築物では通常で5年、長期優良住宅と認められれば7年も特例措置が受けられます。
・都市計画税
市町村が土地や建物課す税金で、都市計画税の有無は地域によります。
都市計画税は、固定資産評価額×0.3%で決まります。
都市計画税の場合、住宅用地であれば特例措置があります。
200㎡以下の土地なら課税標準額を3分の1に、200㎡超の土地の場合家の床面積の10倍までの広さなら課税標準額が3分の2になります。
◯その他に必要になるコスト
●自治会などにかかるコスト
一軒家に済むなら、自治会や町内会への参加は大切です。
年会費は会によって様々で、数千円のところもあれば、数万円必要になる地域もあります。
その他にも、地域のお祭のための寄付を求められる場合もあります。
お金の支払いがなくても、地域の清掃活動やパトロール、ゴミ捨て場の片付けなど、労働力をコストとして支払うことが必要になる場面もあります。労力という観点で考えるなら、近所付き合いも一種のコストです。
賃貸とは違い、家を持ったら長期間その地域に住むことになります。その地域で気持ちよく生活するためには、地域活動への協力は非常に大切です。
●防犯にかかるコスト
オートロックのあるマンションとは違い、一軒家なら防犯についても自分で考えなくてはなりません。
人感センサーのついたカメラを設置したり、窓の鍵を複数付けたりなどすれば当然お金がかかります。家をあけることが多いならば、防犯サービスへの加入を検討するのも良いでしょう。
◯マンションの維持にかかるコスト
ここまで一軒家の維持コストについて考えてきましたが、マンションの場合はどんな費用がかかるのでしょうか。
マンションでも、一軒家と同じように税金や修繕費が必要になります。
面積が狭い分税額は低くなりやすいのですが、管理費や毎月積み立てることになる修繕費は割高に感じやすいです。
●管理費
マンションでは毎月管理費が必要になります。
金額は部屋の大きさや設備によっても異なりますが、金額は1万円から2万円ほどになることが多いです。
管理費は、マンションの共有部分の清掃や、エレベーターの点検などに使われます。
コンシェルジュがいるマンションや、フィットネス施設があるような設備の充実したマンションでは管理費も高額になります。
●修繕費
一軒家とは違い、自分で修繕を行う必要はありません。毎月住民が修繕費を積立て、必要になったら積み立てたお金を使って修繕を行います。
金額は管理費と同じく、1万円から2万円ほどになることが多いです。
修繕費は、マンションの外壁を塗り直したり、屋上の防水加工を直したりするのに用いられます。
一軒家のように、急に修繕が必要になり出費が生じてしまうという事態にはなりにくく、お金の計画はたてやすいです。
ただし、マンションが大規模な改修工事を行う場合や、急に大掛かりな修繕が必要になった場合は追加で修繕費を支払うこともあります。
●マンションの固定資産税
マンションでも当然固定資産税はかかります。
ただし、一軒家に比べると面積が小さいため金額も少ないです。
ただ、木造と比べると鉄筋コンクリート造は建物の評価額は高くなりやすい傾向にあります。
◯住宅の維持管理にかかるコスト
一軒家にしてもマンションにしても、購入した後も維持管理にお金がかかります。
賃貸やマンションであれば、修繕費は積み立てることになるため急な出費に困ることは少ないです。しかし、一軒家の場合は意識して修繕費用を積み立てておかなければ、日々の生活に影響がでることもあります。
建物や設備のメンテナンスにかかる費用はどのぐらいなのか、何年毎にメンテナンスが必要になるかを意識して計画をたてるようにしましょう。