注文住宅を建てる時、どうしても間取りや内装・設備など家の内側のことばかりに気が向いてしまいがちです。
しかし、快適な暮らしのためには、建物以外の外構部分について気を配ることも大切です。
外構には、門や塀、庭などがありますが、その中でも最も日常使い勝手に影響するのが駐車場です。
不便な駐車場は毎日のイライラの原因になるだけでなく、家や車の傷、怪我の原因になります。
快適に使いやすい駐車場をつくるコツや、注意すべきポイントにはどんなものがあるのでしょうか?
◯車の大きさ
駐車場をつくる上でまず考えるべきなのは車の大きさです。
普通の車の大きさはおよそ長さ450cm以下、幅が168cm以下です。
軽自動車の場合は長さが340cm以下、幅は148cm以下。ワゴン車の場合は長さが500cm程度、幅は180cmほどになります。
車の大きさに対し、前後に50cm、左右に65cmずつ加えた広さが最低限車を停めるのに必要な駐車スペースの広さです。
自分の今持っている車や、将来買いたいと思っている車の大きさにあわせた駐車場をつくりましょう。
ただ、出入りのしやすさや荷物を持った移動、駐車のしやすさを考えるともう少し余裕を持った方が使いやすいです。老後まで暮らす予定の家なら、車椅子の乗り降りに必要なスペースついても考えておくと安心です。
◯建物と駐車場のレイアウト
駐車場を敷地のどこに配置するかも重要な問題です。
家の前の道路状況によっては、余裕を持って駐車スペースをつくらないと車の出し入れが困難になる場合もあります。駐車場や建物だけでなく、接している道路の状況も考慮して場所や形を決めましょう。
また、建物や駐車場スペースを確保するために、敷地ギリギリまで家を建てたり、境界ギリギリに駐車場を設けたりする場合は更に注意が必要です。
敷地ギリギリに家を建てると、隣家との距離が近くなり、騒音やプライバシーの問題が発生しやすくなります。更に、建物同士が近すぎることは、火事が起こった時に延焼しやすくなります。
◯駐車場の屋根と固定資産税
雨風や汚れ防止のために、駐車場に屋根を希望している人も多いでしょう。しかし、家本体とは別に屋根をつくる場合、固定資産税に注意しなければなりません。
たとえ簡単なガレージのつもりでも、課税対象の建物とみなされれば固定資産税がかかってしまいます。
固定資産税の対象となる条件は次の通り。
- 屋根があり、3方以上外周壁や建具で囲われていること
- 基礎等で土地に固定されていること
- 居住、作業、貯蔵等に利用できる状態にあること
柱と屋根だけのカーポートなら問題ありませんが、壁のあるガレージは対象となる可能性が高いです。
固定資産税は登記簿ではなく、現況を元に課されます。住宅を建てた後に建築した場合でも対象になるため、DIYでガレージを手つくりしようと考えている人は特に注意しましょう。
◯狭い土地ではインナーガレージがおすすめ
インナーガレージとは、家の一部がガレージになっているもののこと。
都市部など、土地に限りがある場合は、駐車スペースを確保するのも大変です。建物と別に駐車場をつくるのは難しく、別に駐車場を借りるのはお金がかかります。
そこでおすすめなのがインナーガレージです。
1階の一部や全部を駐車場にしてしまうことで、狭い土地でも住居スペースと駐車スペースが確保しやすくなります。
屋根と壁があるため、雨に濡れたり車が汚れたりする心配がありません。また、室内に車を停めることになるため、イタズラ対策や盗難防止にもなります。
インナーガレージによって、リビングやキッチンなどの生活スペースが2階以上になるため、家と家の距離が近い地域でも採光が確保しやすくなるのもメリットです。
ただし、家に入るためには階段で2階に上がらなければならなくなるという点には注意しましょう。若いうちはよくても、年をとると重い荷物を持って階段を上がるのは大変になります。
将来のことを考えるなら、登りやすい広めの階段をつくったり、エレベーターのためのスペースを確保したりしておくとよいです。
◯車が2台以上ある時の駐車場について
車が複数になる場合、停め方によって駐車場の形や使い方も全く違うものになります。
設計を始める前に、車は何台あるのか、これから増える予定はあるのかについては必ず伝えてください。
直角に駐車する
全ての車が道路と直角になるように止める場合、最も出し入れがしやすくなります。
前向き駐車もバック駐車も簡単で、運転や駐車が苦手な人でも使いやすいです。
他の車の駐車状況に左右されずに出し入れができるため、頻繁に車を利用するならこの停め方がおすすめです。
欠点は道路に設置している面の多くを駐車スペースに取られてしまうことです。
道路に接している長さが短いと、玄関からの出入りが不便になったり、玄関が駐車場の後ろになったりしてしまいます。
縦列駐車
道路に対して1台目は直角に、それ以外の車は1台目の奥に列になって停める方法もあります。
旗竿地など、間口が取れない土地でも複数の車を停めやすいです。
また、建物の面積を確保しやすく、広い家をつくりやすくなります。
縦列駐車のデメリットは、手前の車が外に出なければ奥の車を出せないということです。奥に停める車の使用頻度が低ければ問題ありませんが、どちらの車も頻繁に利用するという場合には不便です。
◯使える駐車場でなければ意味がない
せっかく車を停めるためのスペース用意するのですから、大きさが足りなかったり、出し入れが困難になったりしてしまうようでは意味がありません。
大抵の業者は使うときのことを考えて駐車場を設計しますが、中には家を広くするためにギリギリの駐車場をつくり、実際の使用感は考えないような設計者もいます。
特に注文住宅は依頼者の意志によって内容が決まってしまうため、不便な駐車場が誕生しやすいです。
駐車場をつくる前には、業者にシミュレーションをしてもらうと安心です。紙の上で長さを図って考えるのは限界があります。専用のソフトなどを使用して3Dでシミュレーションすれば、使いにくい駐車場は生まれにくくなります。
家を建てるとなると、家の内側や建物の外観ばかり考えてしまいやすいですが、駐車場の使い勝手は快適さや安全性にも関わる重要な部分です。疎かにすることなく、使いやすい駐車場になるよう気をつけましょう。