注文住宅は決して安い買い物ではありません。大きな買い物だからこそ、上手に節約して無駄のない家づくりを目指したいです。
賢い家造りを考える上で気になるのが、注文住宅の相場です。住宅は一生に一度の買い物になる人がほとんどで、どの程度なら妥当なのか感覚的に分かる人はいません。
では、実際に家を建てた人はどのぐらいの費用がかかっているのでしょうか。また、資金計画で失敗しないようにするためにはどうしたら良いのでしょうか。
◯注文住宅の相場と地域
まずは注文住宅全体の相場を知るために、2015年にフラット35を利用した人のデータを見てみましょう。
調査によると、住宅建設費は平均で3,226万円です。
しかし、予算を考える際にこの全国平均を参考にしてしまうのは危険です。住宅の価格は地域よって大きな差があるためです。
同じフラット35の調査結果から、地域ごとの建設費を見ていきましょう。
首都圏:建設費平均3,508万円、平均52坪
近畿圏:建設費平均3,264万円、平均60坪
東海圏:建設費平均3,354万円、平均72坪
その他の地域:建設費平均3,205万円、平均87坪
首都圏とその他の地域では平均建設費に300万円もの違いがあります。面積も同じように大きな開きがあります。
同じ60坪の家を建てる場合でも、首都圏とその他の地域では必要な金額が全く異なります。
他の人が建てた住宅の価格や、平均価格を参考にする際は、地域やエリア、広さも考慮に入れなければなりません。
◯平均価格はあまり参考にならない
注文住宅の価格は地域によってばらつきがあります。では、同じ地域の注文住宅であれば予算の参考にしても問題ないのでしょうか?
残念ながら、答えはノーです。
2017年に行われた注文住宅購入者を対象としたアンケートでは、注文住宅購入にかかった費用について以下のような結果が出ています。
2000万円台:38%
3000万円台:33%
4000万円台:18%
5000万円以上:11%
平均価格で考えれば、フラット35の利用者と同じく3000万円台が平均となるでしょう。しかし、実際には3000万円台以外の人が7割近くを占めているのです。
注文住宅にかかる費用は、土地の状況や、どの業者に依頼するかで大きく変わります。人によってかなりばらつきがあるため、平均価格はそれほど参考にならないのです。
◯予算はどのように決めるべきか
注文住宅の予算を考える際に相場があまり参考にならないとなると、どこから予算を考えるべきなのでしょうか?
資金計画を立てる際、最も重要なのは住宅ローンをいくら借りるか、ということです。
住宅購入に使えるお金は、自己資金と住宅ローンの借入金の合計になります。
一般的に、自己資金は住宅購入にかかる費用の2割あるのが望ましいとされています。自己資金に余裕がない場合でも、最低1割は用意しておきたいです。
自己資金が800万円用意できる場合、自己資金が2割なら3200万円のローンとなり、合計4000万円が予算ということになります。
ただ、頭金だけで借入額を決めてしまうのはまだ早いです。
貯金が今まで順調にできていたからと言って、これから必要になる住宅ローンの返済が順調にできるとは限りません。
借入額を考える際にもう一つ重要な観点は、毎月の返済額と借入期間です。
毎月どの程度の金額までなら返済できて、それを何年続けることができるかを考える必要があります。
同じ金額を借りるのでも、20年ローンと30年ローンなら当然後者の方が月の返済額は小さくなります。返済にかけられる期間は、定年の年齢から今の年齢を引くことで計算できます。一般的には30年ほどかけて返済することが多いです。
返済額について考える場合、金利についても考慮しましょう。
固定金利の住宅ローンなら完済まで金利は変わらず一定ですが、変動金利の場合金利の上昇で返済額が増える可能性があります。変動金利を選ぶなら、金利の変動に備えて返済計画に余裕を持っておかなければなりません。
長く安定して返したい人は、固定金利の住宅ローンを選ぶのが良いでしょう。
◯住宅価格を抑えるコツ
住宅購入資金のうち、全てが建物価格に使える訳ではありません。土地がなければ土地購入費がかかります。また、申請に必要な費用や税金などもかかります。それらにかかる費用を差し引くと、思っていたより建物にかけられる資金は少ないということが分かるはずです。
では、限られた予算の中で希望通りの家を作るには、必要なところにお金をかけ、それ以外の価格を抑えるという工夫が求められます。
では、住宅価格を抑えるためのコツをいくつか紹介していきます。
●メリハリをつける
こだわるところとそうでないところのメリハリをつけることが非常に重要です。
・システムキッチンには高グレードのものを使用する代わりに、壁のクロスを安いものに変更する
・床材は一番安いものを使う代わりに、窓枠には高級感のあるものを選ぶ
このように、お金をかけるところと、節約するところをはっきりと区別することで、価格を抑えながら望みどおりの家を建てることができます。
特に壁や床は面積が広いため、グレードを下げることで大幅に節約することが可能です。
●建物の形はシンプルに
建物の形が複雑だと壁面積が増えるため、壁材が余計に必要になります。変わった構造の住宅は工事の手間も増え、工事期間が伸びる原因にもなります。
建物の形は正方形に近ければ近いほど価格を抑えられます。
●部屋数を減らす
部屋の数が多いと壁の設置費用やクロス代が嵩みます。また、あまり空間を細切れにすると圧迫感のある居心地の悪い家になります。
ただし、あまりに壁が少なすぎたり、吹き抜けを作ったりすると、今度は強度の問題が発生します。どれだけ壁を減らすかは、設計者と相談して決めましょう。
●水回りをまとめる
水回りがバラけていると、余計に配管が必要になります。
キッチンや風呂場、トイレなどはできるだけ近くに配置しましょう。
◯自分にあった家づくり計画
注文住宅の価格を考えると、どうしても相場や平均価格が気になってしまいます。
しかし、注文住宅の価格はケースバイケースで、他の人の例が参考にならないことも多いです。
資金計画で失敗しないためには、収入や自己資金をベースに考え、そこから無理のない住宅ローンを組むことが大切です。